認知症と歯科 誤嚥性肺炎のリスクを抑える口腔ケア

身体のこと

誤嚥性肺炎とは

2018年の調査で日本での死亡の原因の1位は悪性新生物2位心疾患3位老衰となっていますが、年齢別にみてみると順番が変わってきます。年齢とともに悪性新生物の割合が減り、肺炎の割合が多くなります。肺炎の中でも誤嚥性肺炎が重要な位置を占めています。

では、誤嚥性肺炎というものはどんな病気かというと、食べ物や唾液などを飲み込む働きを「嚥下」といいます。嚥下した食べ物や唾液などは、口から食道へと送られます。このように本来は食道に送られるものが、誤って気道に入り込んでしまうことを「誤嚥」といいます。この誤嚥によって起こるのが「誤嚥性肺炎」です。

誤嚥性肺炎が高齢者に多い理由は、主に4つあります。

嚥下障害

高齢になると、うまく飲み込むことができない嚥下障害が起こりやすくなります。病気が原因で起こることも多く、嚥下障害を起こす病気の半分以上を脳卒中が占めています。そのほかに、パーキンソン病やアルツハイマー型認知症なども原因となります。また、誤嚥性肺炎は、寝たきりの人に多く発症します。

せき反射の働きの低下

通常、誤嚥が起こると、反射的にせきをする「せき反射」により、気管に入ったものを口に戻します。せき反射は睡眠中にも働きますが、高齢者や脳卒中を起こした人は、せき反射がうまくできないことが多く、その場合は睡眠中の呼吸に伴って唾液などが少しずつ気管に入っていきます。その結果、誤嚥性肺炎が起こることがあります。

口の中が清潔に保たれていない

特に持病や何らかの後遺症がある高齢者では、歯みがきが不十分だったり、飲み込みきれずに食べかすなどが口の中に残っている場合があります。そうした状態では細菌が繁殖しやすく、飲食物や唾液と一緒に気管に入って、誤嚥性肺炎を発症しやすくなります。肺炎の原因で最も多い肺炎球菌という細菌は、国内の高齢者の3~5%の鼻やのどの奥に住みついていることがわかっています。また、歯周病の原因となる嫌気性菌が誤嚥性肺炎の原因になることもあります。

体力や抵抗力の低下

高齢者や重い病気のある人は、体力や抵抗力が低下していることが多く、誤嚥性肺炎を発症しやすくなります。

誤嚥性肺炎の予防・治療

誤嚥性肺炎の治療は、原因となる細菌に合った抗生物質(抗菌薬)を使うのが基本です。軽度なら飲み薬が使われ、中等度から重度の場合は、入院し、注射薬による治療が行われます。高齢者の多くは、重症化することが多いので、その場合入院して治療を受けることになります。日常生活でも、誤嚥性肺炎の悪化や再発を防ぐために次のような対策を行います。

口の中のケア

これはあとでまとめて説明します。

嚥下指導

誤嚥を防ぐ正しい食事の仕方を学びます。

禁煙

喫煙は気道が粘膜をきれいにする働きを抑制してしまうため、細菌がつきやすくなります。

肺炎球菌ワクチンの接種

65歳以上の人や、60歳~64歳の人で心臓・腎臓・呼吸器の病気がある人は、早めに一度受けることが勧められています。

口の中のケア

口の中のケアはどうすればいいかですが、基本的なケアは、何といっても歯ブラシを使用してのご自身でのブラッシングです。とくに寝ている間は口の中の細菌が繁殖しやすいので、寝る前は念入りに磨きましょう。

歯ブラシは、あまり大きくないものを選びます。硬さは「ふつう」でいいのですが、迷ったら「やわらかめ」を選ばれるといいでしょう。大事なのは力を入れすぎないことで、軽い力でマッサージをするようにブラシを当ててください。加齢とともに歯肉が下がってきて歯の根元が露出していきます。根本は頭の部分に比べて弱いので研磨剤の入った歯みがき剤をつけて力を入れてゴシゴシこすると削れてしまいます。

歯ブラシは鉛筆を持つようにすると力が入りにくくなるのでお勧めです。力は150~200gですが、これは歯ブラシの毛先が広がらない程度の軽い力です。角度は45度くらいで歯と歯ぐきの境目をマッサージするようにしていただくといいと思います。

歯ブラシを使用してのブラッシングのあとは、歯間ブラシやデンタルフロスを使うと、さらに効果的です。これらのケア用品は、お口の状態によって適したものが違ってきます。かかりつけの歯医者さんで指導してもらうとよいでしょう。

ブラッシング以外にもう1つおすすめとして唾液をたくさん出させる方法を紹介します。唾液は様々ないい効果があるのですが、年齢とともに唾液の分泌が減ってしまいますので、これを出させるには頬を押したり舌を動かしたりすることで分泌を促すことができます。これは「舌回し」という運動ですが、口を閉じ、歯ぐきに沿って、舌を左右回り両方にぐるぐると回します。慣れていない方にこの「舌回し」をしてもらうと、「首が痛くなった」と訴える人が多いのですが、これは舌を動かす筋肉が弱っている証拠です。寝たきりになってしまう人たちの多くは、うまく舌を使えず、食事に大きな問題を抱えています。舌を動かすことで、お口の周りの筋肉が活性化され噛みやすくなり、唾液がたくさん出て食事がしやすくなります。歯周病予防と併せて、二重の意味で健康寿命を延ばす方法です。

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